2026/08/09 07:41

山下義男商店ジャーナル Vol.4

巾着バッグとは。

巾着バッグ。

私たちにとっては、昔から身近にあるバッグです。

紐をきゅっと引けば口が閉じ、緩めれば中のものを取り出せる。

とてもシンプルな仕組みですが、改めて考えてみると、

「巾着って、いったい何なのだろう?」

そんな疑問が浮かんできます。

今回は、巾着バッグの「本質」について考えてみました。

巾着バッグとは、何か。

巾着の一番の特徴は、袋の口を「紐」で絞ること。

紐を引く。

それだけで袋の形が変わり、中のものを包み込むように口が閉じます。

つまり巾着とは、

「ものを入れる袋」と「紐を引いて閉じる仕組み」

から生まれた、とてもシンプルな道具です。

そして、このシンプルさには大きな魅力があります。

入れるものによって形が変わる。

荷物が少なければ小さくまとまり、たくさん入れればふっくらと膨らむ。

決まった形を持たないからこそ、中に入れるものに合わせて形を変えてくれる。

それが巾着の面白さなのかもしれません。

巾着の本質は「包む」こと。

巾着を見ていると、ひとつ気づくことがあります。

それは、巾着は「収納する」というより、

「包む」ための道具なのではないか

ということです。

紐を引くと、袋の口が少しずつ寄り集まり、中に入れたものを包み込んでいきます。

バッグのように「形を保つ」のではなく、

中身に合わせて形を変えながら、そっと包んでくれる。

そこに巾着独特の優しさがあります。

巾着は、日本だけのもの?

「巾着」という言葉を聞くと、日本らしいものという印象があります。

着物、浴衣、お祭り、和装。

確かに、日本では巾着が暮らしや装いの中で親しまれてきました。

しかし、

紐で口を絞る袋そのものは、日本だけのものではありません。

海外にも、同じような構造を持つバッグがあります。

英語では一般的に「drawstring bag」や「drawstring pouch」などと呼ばれます。

実際、ニューヨークのメトロポリタン美術館には、1630年のイギリス製のドローストリングバッグが収蔵されています。

さらに、18世紀のフランス製、18~19世紀のアメリカ製など、さまざまな時代・地域の巾着型バッグを見ることができます。

つまり、

「紐で口を絞る袋」という考え方は、世界のいろいろな場所で生まれ、使われてきた

ということです。

日本の巾着と海外の巾着。

では、日本の巾着と海外のドローストリングバッグは、何が違うのでしょうか。

実は、基本的な考え方はよく似ています。

「小さなものを入れる」

「紐を引いて口を閉じる」

「必要なものを持ち運ぶ」

という、とても人間らしいシンプルな道具です。

一方で、それぞれの土地の文化や服装によって、素材や装飾、使い方は変化してきました。

たとえばヨーロッパでは、17世紀以降、女性が腰に紐で結びつけて使う「tie-on pocket」が広く使われていました。

また、イギリスのV&Aには、16~17世紀の「burse」と呼ばれる袋や、18世紀のドローストリングバッグなども残されています。

巾着のような袋は、

「必要なものを身につけて持ち歩く」

という、人間のごく基本的な欲求から生まれたものなのかもしれません。

だから、巾着は今でも古くならない。

ファスナーがあり、マグネットがあり、さまざまな高機能なバッグがある現代。

それでも巾着はなくなりません。

なぜでしょう。

きっと、巾着の仕組みがとても自然だからです。

開ける。

入れる。

紐を引く。

閉じる。

それだけ。

そして、使う人が持つものによって、形が変わります。

財布を入れてもいい。

スマートフォンを入れてもいい。

小さなお菓子を入れてもいい。

旅先の小物をまとめてもいい。

使い方を決めすぎない。

それも巾着の魅力です。

山下義男商店が考える「巾着バッグ」。

私たちが作っている巾着バッグも、

基本はとてもシンプルです。

袋があり、紐があり、紐を引けば口が閉じる。

でも、そのシンプルな形だからこそ、

生地の表情や、手触り、縫製、紐の具合など、

ひとつひとつの違いが、そのままバッグの表情になります。

遠州の生地を使い、

天日干しによって生まれる自然な風合いを活かす。

そして、使う人の暮らしの中で、形を変えながら使ってもらう。

私たちは、巾着を単なる「小さな袋」とは考えていません。

長い時間をかけて世界中で使われてきた、
とてもシンプルで、とても人間らしい道具。

それが巾着なのだと思います。

「巾着」という小さなバッグから、世界が見えてくる。

日本の巾着。

海外のドローストリングバッグ。

呼び方や素材、デザインは違っても、

「大切なものを入れて、持ち運び、包む」

という役割はよく似ています。

そう考えると、巾着は日本だけの文化ではなく、

人が「ものを包み、持ち運ぶ」ために生み出した、世界共通の知恵

とも言えるのかもしれません。

山下義男商店では、そんな昔から続くシンプルな道具を、

遠州の生地と、私たちなりのものづくりで、今の暮らしに合わせて作っています。

ぜひ一度、巾着を手に取って、

「紐を引いて口を閉じる」

という、とてもシンプルな動作を楽しんでみてください。

山下義男商店

「良いものを、長く使っていただく。」

そんなものづくりを、これからも続けていきます。